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GLASS Fermata

基本、朝ルル中心、in騎士団なルル受ギアス小説サイト。詳しくは【First】をご覧下さい。日常的呟きとか、考察とか、ヨロヅにイラストとか付いたりするかも。
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  • 04/29/06:47

Made for you!!~02



バレンタイン文です。
朝比奈×ルルーシュです。
朝比奈にのみゼロバレ済み。
まだ付き合ってません。
友達以上恋人未満の両片思い。
そんな二人のバレンタイン奮闘記です。
むしろ頑張れひなちゃん!!な内容です。

それでもOK!大丈夫な方は続きからどうぞ!!







数時間後、朝比奈は幹部専用キッチンに立っていた。

机上には以前検索してプリントしておいたとあるお菓子のレシピが載っていて、その作業工程を確認しながら慎重に、朝比奈は料理を作っていく。

「前に勢いで思わず調べた時は、本当に作る事になるなんて思わなかったなー」

そう言いながらぐるぐるとボールの中を掻き回す腕が止まる事はない。
偶然それが彼の好物だと知って思わずネット検索して調理方法まで調べてしまったけれど、それも調べただけで終わった。
それを誰に話す気もなく、結局調べ損で終わるのだと思っていた。
そう、今日この時までは。

「そもそも、作る以前にあげる機会なんて、あるとは思わなかった…し」

そう口にして気恥かしくなったのか不意に顔に熱が集まるのを感じて朝比奈はぶんぶんと頭を振った。
思わず混ぜる手に力を込めそうになるが、それは今まで四聖剣として培った忍耐を総動員して冷静になるよう努める。
暴走して料理が失敗しました、では意味がない。
それでなくてもゲットー暮らしの日本人。
材料費を無駄にする訳にはいかなかった。

普段は魔の巣窟と化しているキッチンだが、今週はタイミング良くゼロが『しばらく女性団員辺りが使うだろうからな』と言って度々来ては片付けていってくれるので、ピカピカである。
ゼロが言うには「ちょっと片付けておいた」だけらしいが、他の全幹部から見ればそれはピカピカであった。
まるで新品のキッチンのようだと井上が言っていたのに、今も激しく同意できる。
彼はレジスタンスのリーダーなどという肩書を持ちながら、団員の誰よりも家事全般に精通していた。

「こういう所、ゼロって絶対良い嫁になれるよねー」

家庭的、とはきっと彼の為にあるのだろう。
先日C.C.が持っていたゼロが作った四作品という名のお菓子を分けてもらった事があったが、食べた時はあまりの美味しさに仰天したものだ。
お菓子だけではなく料理の腕も凄いという話で、休みの日いは家でキッチンに立つ日事が多いらしい。

これは彼自身に聞いた事であるが、勿論ゼロである彼が騎士団内でそのような会話を口にする事はない。
ならば何故、朝比奈はそんなゼロのプライベートな情報まで知っているのか。


以前、ちょっとした事故という機会に恵まれた朝比奈は、ゼロの仮面の裏の素顔を知っていた。
その機会というのが、ゲットーでゼロが着替えをしているすぐ傍でちょうど銃撃戦沙汰が起こり、其処に朝比奈が遭遇してしまったという単純明快なゼロのミスだったのだが。

流れ弾からゼロを庇った朝比奈は、その曝されている素顔に驚いた。
所謂、一目惚れ、であった。
正体を知られ警戒すると同時に怯えたゼロに、我に返った朝比奈は自分が無害である事を力説した。
絶対に誰にも話さない。
四聖剣にも、藤堂さんにだって言わない。
決して害する気も傷付ける気もない。
だから安心して良いのだと。
実際ギアスを使おうと思っていたルルーシュは、咄嗟に自分を庇ってくれた大きな手に動揺していた所為か、勢いに押され思わずギアスを掛け損ねてしまったのだが。
真摯な瞳と温かな笑顔に、少し絆された部分が大きかった。
無論、それを朝比奈が知る由もなかったが。
それ以降、騎士団以外の部分で朝比奈は、ゼロと度々交流を持つ事が増えた。
彼の私室へ頻繁に顔を出したり、二人きりで世間話に花を咲かせたり、休みに都合を付けて租界へ出掛けてみたり。
普段藤堂や四聖剣と行動する事しかなかった朝比奈にプライベートな時間が増えた事に気付いたのは、当然藤堂や四聖剣であった。
しかし口を割らない朝比奈に、それなりの理由があるのだろうと、何となく察しながらそれは暗黙の了解となって今に至る。


ゼロと時間を共有する度に、会話を交わす度に、彼を知る度に、朝比奈は彼を好きになった。
けれど最初に機会を逃して以来、言葉としては一度も朝比奈はそれを相手に伝えた事はなくて。
親しくなればなるほど、その関係に幸せを感じると同時にもどかしいような遣る瀬無さを覚えるのだ。
今の関係を壊して彼に負担を掛けたくないという気持ちと、己の欲がせめぎ合って。
肝心の一言が、音にできなくて。
胸が締め付けられる痛み度に、その感情を思い知らされる。
好きなのだ、自分は。
そういう意味であの子の事を。

だから、彼が家事全般完璧で料理もよくすると聞いた時、世間の恋する野郎にありがちな、自分の家の台所で料理する最愛の人の姿というものを朝比奈もやはり想像してしまった訳なのだが。
普段のあの仮面姿の彼がエプロンというギャップに、朝比奈は再びその光景を想像する。

「……普通に考えて、あの細腰にエプロンは似合うよねー…あ、あのチューリップ仮面の儘でも可愛いかも……色は」

やっぱりピンクだよねっ!!…と。
そんな事を力説しながら凄く良い笑顔で甘い匂いと同じくらい甘い空気を垂れ流しながら何かを料理している朝比奈。

その姿を気になって影からうっかり覗き見てしまった者達は、その場で蒼白になったまま固まっていた。

先程からどんどん上機嫌になる朝比奈は、時には頬を染めて乙女のように、時には真顔になったかと思えば、次の瞬間には締まりの無い笑顔でへらへらにこにこにやにやと、終始ずっとこの調子で延々ぶつぶつと呟いていた。
その呟きというのが最初こそ独り言の如く小声であったものの、どんんどん大きくなり、度々気になる単語が聞こえてくるようになったのだが。
とにかく、それはゼロに関する事ばかりであった。
それもむしろ好意的な意味で、ゼロのこういう仕草が可愛いとか、この時こんな感じで可愛かったとか、こんなところで思わずぐらぐらきたとか、はっきり言って恐らくそれはカレンやディートハルトにしか理解できないような内容だった。

気になって覗きに来てしまった玉城や杉山に扇は扉の影で真っ青のままドン引きし、むしろ察してやってきた千葉や卜部は痛む頭を抱えて溜息を吐いた。
変わらず楽しげに眺めている井上は、ある意味大物である。

「……朝比奈さんの好きな人って、」
「それ以上は言わないでくれ」
「知りたくなかった事実、だよな」
「…モテるやつの考えは理解できねー」

そのまま現実を見ていたくない三名はふらふらと血の気の引いた顔でその場を離れて行った。
好奇心は身を滅ぼす。
その言葉を、身をもって思い知ったのだろう。

「……前々からそうじゃねーかとは思っていたがな」
「四聖剣の方は知っていたんですか?」
「理由や切っ掛けは知らないが、一人で何処かへ行く時間は増えたからな。様子から、何となく察してはいた」
「あー…中佐は分かんねぇぞ?あの人根っからの軍人だからな、そっちは鈍いしよ」
「確かに…だが、ゼロ自身も気付いているかどうか怪しいものだ」
「ゼロも鈍そう、ですよね」

朝比奈も思い悩む訳だ、と納得すると同時に少し同も情する。
C.C.の愛人説もある上に、カレンというライバルもいるのだ。
これがもっと普通の女性であったならば、まだ勝率は高かっただろうに、難易度は誰から見ても高すぎる気がした。

室内では朝比奈が何か思い出したのか嬉しそうに目を笑み細め、菓子の入ったオーブンを覗いているのが見えた。
幸せそうな張本人に、本人が良ければそれで良いかと残りの三人も談話室へと踵を返す。
朝比奈は団員の中では料理は上手い方なので、酷い失敗をする事は無いだろう。
そういう意味で言うのであれば、朝比奈の方がカレンよりも勝率は高いかもしれない。

それも受け取ってもらえればの話、だが。

「…そういえば、ゼロって明日こっちに顔出すのか?」
「我々はそのような話は聞いていませんが」
「え、じゃあ朝比奈さん……どうやって渡すつもりなのかしら」



疑問は、調理室から漂う甘い空気に紛れて消えた。




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