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GLASS Fermata

基本、朝ルル中心、in騎士団なルル受ギアス小説サイト。詳しくは【First】をご覧下さい。日常的呟きとか、考察とか、ヨロヅにイラストとか付いたりするかも。
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  • 04/29/06:31

ラブ☆ポーション04

そして今回はついに朝ゼロのターン!


朝ルル力入り過ぎて長くなってしまったので分割したかったのですが、区切る場所に悩んだのでそのまま載せてみます。
読めない方いらっしゃいましたら言って下されば分けますので遠慮せず言って下さいね!

それでは、続きからどうぞー!

 


止める間もなく一息に咥内を滑り落ちた大量の飲料に、噎せた訳ではなかったが反射で朝比奈は咳込んだ。

己が話しかけた事が原因と気付いたゼロが、普段冷静な声音に少し慌てた色を載せて近寄ってくる。



「だ、大丈夫…か?」
「ちょっ、声、かける時、くらいっ…気配消さないでよ!」
「それは、すまない。今後は気をつける事にする」



感情を見せる事自体稀なゼロの珍しく労りを含んだ声に、朝比奈はそれ以上怒るよりも驚きの方が勝ってしまった。


ふと、そういえばゼロが謝罪を口にする事自体は珍しくないな、と朝比奈は気付いた。

自分に非がある場合はどんな小さい事だろうと、相手が例え下っ端団員であっても、ゼロは謝罪を口にする。

それはいっそ紳士的ですらあって、高慢に見える反面その細やかな気配りや寛容な優しさを、知る者達は皆好ましいと感じていた。


背中を摩る手が妙に優しく感じて、その当たり前のような手つきに新鮮さを覚えると同時に少し好感を抱く。

擽ったいような心地で俯いていた朝比奈は、呼吸を整えながらゆっくりと顔をあげた。



「あーもう、別に……、」



いーんだけどさー、と。

続く予定だった朝比奈の言葉は、次の瞬間喉から転がり落ちるように奥へと引っ込んだ。




リンゴーンッ♪
と、鐘が鳴る音が聞こえた気がした。


きっと運命という名が実在するならば、こんな形をしているのだと思った。

心臓が大きく高鳴ったと感じた次の瞬間には、もう鼓動は駆け足で走り出して。

真っ黒な衣装を身に纏い、ほっそりとした足首から折れそうな腰、薄い胸から肩へと続くすらりとしたラインを惜し気もなく曝して優雅に立つその人に、魅入ってしまった。


目を見開いた朝比奈は目の前の存在に絶句する。



「……朝比奈?大丈夫か?」



突然固まってしまった朝比奈に対し先程の事もあったのだろう。

普段は見せない殊勝な態度でどこか頼りなさげに、けれど穏やかにゼロは声を掛けた。

今までならば有り得ないゼロのその様子は、今の朝比奈にとってはあまりに可愛いらしく見えてしまって。

どこか不安気に揺れる音が鼓膜に触れるとともに、機械越しのその声に朝比奈は身を震わせる。

彼の姿を間近で直視してしまった朝比奈は、悶えかけた己の心境に内心激しく動揺していた。

落ち着こうと叱咤する理性とは反対に、急速に頭へ血が上っていく。



「ゼッ、ゼゼ…ゼロッ?!」
「どうした?…顔が赤いが熱でもあるんじゃないのか?」



そんな朝比奈の動揺や葛藤など露知らず、ゼロは心配気に手袋を脱いで額に手を当てる。

そっと触れてきた己より幾分低い体温の滑らかな感触に、――…ドクンッ と心臓が大きく音を立てて跳ね上がって。

やはり熱いなとそっと覗き込むように囁く声に、更に上昇する熱は理性の鞁(たずな)を擦り抜けそうになる。

引っ込めようとしたゼロの白く細い手を、朝比奈は意志に反してガシッと両手で掴んだ。



「っ、…ゼロ」
「……何だ?」



しかし、そこは恋愛面にとことんまでに鈍いルルーシュことゼロである。

辛くて助けを求めたのかと的外れな事を思い、具合が悪いならばと優しく労りの言葉を綴り続ける。

その声は朝比奈の耳にどこまでも柔らかで甘く、波のような痺れや熱とともに身体を浸蝕していって。


心臓が煩くて、眩暈がするのに、息もできない。

零れる吐息に熱すら徐々に帯びてくる。

それに似た感情に、覚えがあった。

これほど激しいものは、未だかつて抱いた事などなかったけれど。


目の前の自分を心配する存在が今まででは考えられないほど可愛くて、手を離さなければと思えば思うほど胸が締め付けられたように息苦しくなる。

その姿が眩しくて、まるで特別な存在であるかのように直視できないほど、きらきらと輝いて。

これは異常だ、まずいと、頭のどこかが警笛を鳴らすのに、身体はまるで理性の言う事を聞かなくて。



「体調が悪いのか?熱っぽいし、辛いのならば今日は休んで…っ、」



しかし、更に強く握り締められた手にようやくゼロは朝比奈の異変に気付いた。

頬を赤らめたその顔が熱で苦しいというよりも、どこかうっとりと見惚れているようで。



「?朝、比奈??」



ますます状況が分からなくなったゼロは思わず、こてん、と普段の調子で擬音が聞こえそうなほど可愛いらしく首を傾げてしまう。


それが朝比奈に対し、最後のトドメになるとも知らずに。

一瞬、見開かれたその瞳を、何も気付かないゼロは不思議そうに見詰めていた。





朝比奈は軍人である。
しかも、名高い四聖剣の一人だ。
よって、どんなに普段へらへらしているように見えようとも、一般人より遥かに強固な鋼の理性をもっている。

しかし、相手が悪すぎた。
いくら仮面を被ろうと、よりによってそちらの方面はとことんまでに疎い癖に、フェロモン無限大のルルーシュ。
他の人間相手だったならば、まだ忍耐が続いただろうに。


その瞬間の事をゼロは後にこう語る。


“何かがガラガラと崩れる音が聞こえた気がした”…と。

ついに紡がれた朝比奈の言葉が、妙にはっきりとその場に響くのをゼロは感じた。




「……朝比奈?」
「……省吾って呼んで下さい」
「…………………は?」
「省吾って呼んで下さい」



意味が分からない。

あまりのイレギュラーに呆然としながらもゼロは、再度請われた内容に固まっていた。



「省吾って、呼んで」
「………何故…?」
「いいから、呼んでよ」
「……??」
「ねぇ?駄目?」
「…いや、駄目ではない…が、」
「だったら、呼んで?」



呼べば良いのだろうか。

呼べばこの意味不明な状況は解決するのか?

先程の流れと今の状況の繋がりがさっぱり見えないゼロは、とりあえず打開策を口にする事にした。


「…し、省吾」
「吃ってる!」
「省吾」
「もっと優しくー」
「………省吾」
「なーに、ゼロ?」
「…何、って」



にこにこにこ。あまりに満足気で嬉しそうなその笑みに、今度はゼロが絶句する。

背後で犬尻尾がブンブンと嬉しそうに揺れている気がするのは、目の錯覚だろうか。

スキンシップは苦手だったはずなのに、いつの間にか優しく絡む指先の温もりが妙に心地良くて。

大切なものを扱うような慈しみすら感じられる手つきに、ドキリッと思わずゼロの鼓動が小さく跳ねる。


顔は童顔なのに、その手は意外に大きく骨張った軍人の、成人男性の手をしていたから。

触れる感触に、あぁ剣ダコと、これはナイトメアのものだろうか、と。
そんな事を現実逃避のようにぼんやりと考えてしまったりして。


理由も解らぬままほだされそうになったゼロは、内心大いに焦りを覚える。



「…朝比奈」
「省吾っ!」
「……省吾、その」
「うん?なーに?」
「手を、…そろそろ離してほしいんだが」
「えー、嫌!」
「…嫌、って」



何なんだ、今日のこの朝比奈は。

ゼロは今までと違い過ぎる朝比奈の言動に戸惑っていた。

こんな風に他人から優しい手で触れられるのは酷く久しぶりで、どう対応して良いか分からない。


ゼロの記憶が正しければ、朝見掛けた時はまだ通常通り藤堂命な朝比奈であったはずだ。

まるで生まれたばかりの雛が擦り込みのように「藤堂さん」「藤堂さん」と…――
……ん?という事は、これは何か藤堂に関係があってこういった態度をとっているという事か?
いったい、何が目的で。



「ん、もう、いーや」
「…は?」



思考に沈みかけたゼロの意識は、突如発せられたあっけらかんとした声で現実に引き戻された。

不意に離された手に一抹の寂しさを覚え、何を馬鹿なとうろたえた途端、その腕はゼロの身体に伸び。

抱き締められた、と気付いたのはその温もりを感じた数秒後だった。

突然の事態に動揺し抗議しようと発しかけた言葉は、見上げた顔の無邪気な笑顔に、音になる前に凍り付いて。

微かに染まった頬は、反射か、それとも別の新たに生まれた意味か。

そんな事をルルーシュが考えていられるほど、この場に時間も余裕もなくて。



「うん、細かい事気にしない」
「いや、だから…何の話だ?」
「…あのね、ゼロ」



人の話を聞く気が無いのだろうか。

もうどうにでもなれ、と抵抗を放り出して身を預けてしまえば、ピクッと震えた腕はぎゅうっと苦しくない程度にその力を強め。


擦り寄る温もりに、まるで猫か犬みたいな奴だな、と暢気に考えていたゼロの上に、ついに爆弾は投下された。



「好きです」
「……………は?」



今、何だって?
いやいやいや、聞き間違えか?

あまりのイレギュラーに呆然と固まるゼロを見詰め、嬉しそうにふわりと浮かべた甘やかな笑みそのままの甘い言葉を朝比奈は語り出す。

それは今までゼロが受けた誰の告白よりも、真っ直ぐではっきりとした感情の篭った愛の告白で。



「好き、大好き、愛してる。今だってすっっっごく心臓ドキドキして、緊張してるけど、言うよ………」



熱の篭った眼差しで真っ直ぐに見詰める視線の強さに、ゼロは金縛りにあったように動けなかった。

否、動く事を許されなかった。

冗談ではないと物語るその眼が、言葉が、腕の強さが、その感情の真意を突き付けて。



「ゼロ、俺と付き合って下さい」

「はあああああぁぁぁッ?!!」




次の瞬間、響いた第三者の悲鳴にも似た怒声に、ようやくゼロは此処が何処であるかを思い出したのだった。
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