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花ざかりの君へ*01
メルマガ連載の朝ゼロで、ゼロの鈍々重症初恋片思い物語。
たぶんギャグ、そしてシリアス。
基本はin騎士団で、たまに生徒会。
途中で素顔とか素性とか色々バレ入る予定です。
とりあえず最初は朝比奈視点な序章からどうぞー。
吹き抜ける風に誘われるような散策だった。
近辺調査が目的ではあったけれど、通常二人組で行われるそれに連れの不調を認め置いてきたのは朝比奈だった。
見回りは二人組が基本。
そんな当然のルールを、病人は安静にすべきという何とも相手への配慮を前面に押し出した理由で放り出して。
久々に出来た一人きりの時間に、朝比奈は腕を頭上の夜空へ向けて高々と伸ばすと。
そのまま回す等して最近の慣れない仕事で固まった身体をゆっくり動かしていく。
のんびりと歩く頬を撫でていく夜風は肌寒くもどこか温かで、穏やかで。
瞳を閉ざせばここが荒れ果てたゲットーである事を忘れさせるほど、心地良く。
不意に前方頭上から感じた気配。
薄く再び開いた目の端に一瞬、過ぎる白い小さな影が映った。
「………え…?」
反射的に見開いた視界に捕らえたそれは、昔は方々で咲き乱れていた懐かしい薄紅の花弁で。
天から舞い降りてきたかのように、空高く夜風に煽られながらひらひらと落ちてくる…それ。
咄嗟に数歩踏み出した足で瓦礫の大地を蹴ると、朝比奈は伸ばした両手で慌てて掴んだ。
「…うそ、……桜?」
いったい何処から、と零れた呟きは意外に大きく。
珍しく胸を高鳴らせる、微かな期待と驚きを表すようで。
そぉっと握り締めていた手を開くと、そこには確かに見た通りの花弁が一枚存在した。
思わず周囲を見渡すが、そのような木は存在しないし近辺に無いのも確認済みだ。
朝比奈達が此処に来てまだ間もないとはいえ、到着後数日の探索で既に大体の地理は把握している。
この荒れ果てたゲットーに植物が存在する場所など限られているし、少なくとも基地周辺で見られる事は有り得ないのだ。
「風で飛んできた、って事…だよねー」
夜間でも強い春一番に髪や衣服を煽られながら、朝比奈はくるーりと周囲を見渡した。
風向きはちょうど、祖界とゲットーの近い境の方角から吹いているらしい。
運良く見回りルートとの近辺ではあるし、無断で祖界へ出る事は禁止されているがまだゲットー内である境界近辺ならば文句は無いだろう。
第一、煩い相手に見つからなければ問題無いのだから。
一人そう結論付けると、朝比奈は先程より更に軽い足取りで風上へ向かって歩き始めた。
この時はただ、ブリタニアに占拠されて以来見かけなくなった母国の花がまた見られるかもしれない。
そんな、淡い希望と久々に見出だした僅かな楽しみを期待しただけで。
それが運命の分かれ道になるとは知りもせず。
曇りだした弓張月が浮かぶ空の下、上機嫌に跳ねる人影に落ちた桜が、それを予調していたのかもしれない。
たぶんギャグ、そしてシリアス。
基本はin騎士団で、たまに生徒会。
途中で素顔とか素性とか色々バレ入る予定です。
とりあえず最初は朝比奈視点な序章からどうぞー。
吹き抜ける風に誘われるような散策だった。
近辺調査が目的ではあったけれど、通常二人組で行われるそれに連れの不調を認め置いてきたのは朝比奈だった。
見回りは二人組が基本。
そんな当然のルールを、病人は安静にすべきという何とも相手への配慮を前面に押し出した理由で放り出して。
久々に出来た一人きりの時間に、朝比奈は腕を頭上の夜空へ向けて高々と伸ばすと。
そのまま回す等して最近の慣れない仕事で固まった身体をゆっくり動かしていく。
のんびりと歩く頬を撫でていく夜風は肌寒くもどこか温かで、穏やかで。
瞳を閉ざせばここが荒れ果てたゲットーである事を忘れさせるほど、心地良く。
不意に前方頭上から感じた気配。
薄く再び開いた目の端に一瞬、過ぎる白い小さな影が映った。
「………え…?」
反射的に見開いた視界に捕らえたそれは、昔は方々で咲き乱れていた懐かしい薄紅の花弁で。
天から舞い降りてきたかのように、空高く夜風に煽られながらひらひらと落ちてくる…それ。
咄嗟に数歩踏み出した足で瓦礫の大地を蹴ると、朝比奈は伸ばした両手で慌てて掴んだ。
「…うそ、……桜?」
いったい何処から、と零れた呟きは意外に大きく。
珍しく胸を高鳴らせる、微かな期待と驚きを表すようで。
そぉっと握り締めていた手を開くと、そこには確かに見た通りの花弁が一枚存在した。
思わず周囲を見渡すが、そのような木は存在しないし近辺に無いのも確認済みだ。
朝比奈達が此処に来てまだ間もないとはいえ、到着後数日の探索で既に大体の地理は把握している。
この荒れ果てたゲットーに植物が存在する場所など限られているし、少なくとも基地周辺で見られる事は有り得ないのだ。
「風で飛んできた、って事…だよねー」
夜間でも強い春一番に髪や衣服を煽られながら、朝比奈はくるーりと周囲を見渡した。
風向きはちょうど、祖界とゲットーの近い境の方角から吹いているらしい。
運良く見回りルートとの近辺ではあるし、無断で祖界へ出る事は禁止されているがまだゲットー内である境界近辺ならば文句は無いだろう。
第一、煩い相手に見つからなければ問題無いのだから。
一人そう結論付けると、朝比奈は先程より更に軽い足取りで風上へ向かって歩き始めた。
この時はただ、ブリタニアに占拠されて以来見かけなくなった母国の花がまた見られるかもしれない。
そんな、淡い希望と久々に見出だした僅かな楽しみを期待しただけで。
それが運命の分かれ道になるとは知りもせず。
曇りだした弓張月が浮かぶ空の下、上機嫌に跳ねる人影に落ちた桜が、それを予調していたのかもしれない。
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