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Made for you!!~04
バレンタイン文、前編の続きです。
朝比奈×ルルーシュです。
朝比奈にのみゼロバレ済み。
まだ付き合ってません。
友達以上恋人未満の両片思い。
そんな二人のバレンタイン奮闘記です。
今回は頑張れひなちゃん&ルルーシュ!!な内容です。
それでもOK、大丈夫な方はどうぞ!!
SIDE:朝比奈
すっかり冷え切った室内で、けれど朝比奈には寒さを気にする余裕など残されてはいなかった。
部屋には暖房器具も備え付けられているのだが、それすら頭が回らない程に、今の朝比奈は余裕がなかった。
追い詰められていたと言っても良い。
出来あがった菓子をとりあえず綺麗にラッピングした朝比奈は、今、肝心な事を失念していた事に気付き悩んでいた。
自室で正座をしている彼の目の前に置かれているのは、携帯電話。
「………もう、9時だし……時間的には大丈夫、だよ…ね」
そう、現在2月13日、時計の針は午後9時を数分過ぎた時刻を指し示していた。
この時刻、ゼロは基本的に手が空いているので、電話しても迷惑にならない時間帯ではあった。
それは、分かる。
よーく分かっている。
何故なら朝比奈はゼロに私用で何度か連絡した時、決まってこの辺りの時間を指定されていた。
しかし、しかしである。
予めこの時間に掛けてくれ、と言われて掛けるのと、私用で、しかも個人的な事で電話をするのとではだいぶ違う。
今、朝比奈は己の心臓が痛いくらい早鐘を打っているのを実感していた。
ぎゅっと目を閉じると、吸って、吐いて、深呼吸を一つ。
肺いっぱいに酸素を取り込んで、酸素に満たされた脳で落ち着く事に尽力した。
相手は仮面越しとはいえ、度々此処騎士団で顔を合わせている相手である。
数日前だって普通に会話したし、あの時は私室で仮面だって無かった。
ただ今日は少し特別な電話をするからって、緊張する必要はない。
あの時との違いは機械越しかそうではないかの違いではないか。
普段通り、そう、普段通りだ。
自分にそう言い聞かせると、朝比奈は目を開きそっと携帯を手にとった。
電話帳を開いてディスプレイに浮かんだ番号に、知らず緊張で身体が強張っていく。
「そもそも、予定が空いているとは限らないよね…ゼロ、美人だからすっごくモテそうだし」
そもそも彼女がいるかどうかすら聞いた事はなかった。
無意識にそういう話題に触れられなかったのだろうと気付き、これからその事実が発覚するかもしれない事に少し気落ちする。
そうだ、電話をして、駄目ならそれで終わる話だ。
そう考えたらツキリと胸が痛んで、それは嫌だと思っている自分に苦笑する。
けっきょく、どんなに言い訳したところで諦めがつくはずもなく、自分はあの子の事が好きなのだ。
「ゼロ、電話出てくれるかな」
小さく笑うと、朝比奈は携帯の通話ボタンを押した。
コール音が聞こえてくるかと思った朝比奈は、次の瞬間聞こえた雑音のようなそれに、きょとんと瞬き固まった。
『なんだ、…おい、』
『C.C.、俺の携帯で勝手にピザを頼むな』
『そんな事はどうでも良い。電話だぞ、あいつからだ』
『………何だと?』
受話器から聞こえた声はゼロとC.C.、だろうか。
愛人ではないと言っていたがいったいどんな関係なのだろう、と朝比奈は少し眉を寄せる。
自分は行けないそこにいるC.C.が、少し羨ましいような悔しいような……あぁこれが嫉妬か、と何となく朝比奈は納得した。
意外と気分が良いものではないな、と思っていると受話器越しの空気が変わる。
『何だ、どうした?』
機械を通して伝わるその声が、先程C.C.に向けたものより幾分穏やかで優しい気がして、朝比奈はその音に思わず息を呑んだ。
「えーと、ゼロ?」
『本当に朝比奈か?どうした、騎士団の用か?』
「うぅん、ちょっと私用で、だったんだけど」
『私用?』
訝しげな声に奇妙な間の後、少し楽しげな声が返る。
『プライベートで貴方から電話なんて珍しいですね、省吾さん』
先程より幾分年齢相応のその声が、少し普段の仮面越しより親しげに感じて朝比奈の口元も自然と緩んでいく。
「相変わらず公私混同しないんだね、ゼロは」
『まぁ……、組織のリーダーが私情を挟む訳にはいきませんから』
「うん。君のそういうところ、好きだよ」
するりと無意識に出たその音は、愛しげな感情をそのまま声に載せて受話器を通し。
音にした瞬間我に返った朝比奈は焦った。
何を自分は言っているのだろう。
思わず零れた本音はあまりに意味深で、慌てた朝比奈の耳に変わらぬ彼の声が返る。
『それで、用件は何です?』
「あー、うん」
存外落ち着いたそれは露骨過ぎるほどの話題修正で、全く気にされていないどころか気を遣われたその様子に、朝比奈は落ち着くと同時に苦笑した。
伝わらなかった事への安堵と、そして軽い失望を抱きながら。
「ゼロって明日、時間ある?」
『えぇ、一応。明日は出来れば学校に行きたくないくらいなので。出来れば隠れていようかと思っていますから時間ならいくらでもありますが?』
「じゃあ、少し会えないかな……渡したいものがあって、さ」
案外、用件はするりといとも簡単に口から言の葉となって滑り落ちて。
自分でも驚くほど自然に言えたその事実は、開き直りに近かったのかもしれない。
『渡したいもの?』
「駄目、かなー?」
駄目で元々。
そう思いながらも会いたいな、なんて。
やっぱり期待も忘れられなくて。
『いえ……俺も、ちょうど省吾さんに渡したいものがありましたから』
それに、朝比奈は驚いた。
まるで自分と同じタイミングで、用事があったにしろ彼も自分に会いたいと思ってくれていたその事実が、酷く嬉しくて。
聞き間違えではないのかと、少し戸惑いすら覚えるほど。
「え?そうなの??」
『えぇ、……そうですね、ゲットーと租界の境目の公園でどうです?』
けれど柔らかなその声音は、確かに了承とともに待ち合わせの提案なんてものまで運んできて。
漸く湧いた実感と、特別な日の特別なあの子の時間を、一人占めできるその幸せを噛み締めながら。
「うん、大丈夫だよ」
朝比奈は、チラリと視界の端に映る冷蔵庫の中で、少し前にラッピングして閉まった箱を思い出しながら弾む心を押さえて考えた。
休日である明日、一番抜けだしやすい時間帯を考えながら。
「じゃあ、時間は…――」
かくして約束を取り付ける事に成功した朝比奈は、その夜。
明日が楽しみ過ぎて眠れないかも、なんて呟きを零しながらラッピングしたそれを渡す脳内シュミレーションを必死で繰り返しては。
明日会えるだろう相手を想い、緩む口元に今まで浮かべた事もないような柔らかな笑みを浮かべるのだった。
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