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GLASS Fermata

基本、朝ルル中心、in騎士団なルル受ギアス小説サイト。詳しくは【First】をご覧下さい。日常的呟きとか、考察とか、ヨロヅにイラストとか付いたりするかも。
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  • 04/30/05:04

盤上の選別・後


夏コミ直前に突然書きたくなったもの。
夏コミ無料配布の一つです。
後編というより、ただ長かったので前後に分割しました。


※ 注 意 事 項 ※

19話派生の朝ルルです。黒比奈です。
でもルルはほぼ出てきません。
かわりに生存していた朝比奈さんがブチ切れてます。
騎士団は好きなので、糾弾はほぼありません。
糾弾対象は基本シュナイゼルで、ブリタニア側とディートもちょっと、あるかも?
それでもOKな方はどうぞー♪






「ねぇ…それ、本当にゼロの仕業だと思っているの?」
「…え?」

すぅ…と顔から失われていく楽しげな笑みに、扇は背筋が震えるほどの恐怖を覚えた。
朝比奈は、怒っていた。
それはもう、逆鱗に触れていた。
それに漸く気付いたところで、扇が何か制止する事ができるはずもなく。

「ゼロはね、あの子は内に入れた人間には甘いんだよ。それが例え、どんな奴でも騎士団の人間…特に古株には、甘い」

本当、それが嫌になる。
どうして、こんな奴らに甘い顔をしてやる事ができるのかと。
ゼロが与えた恩恵を当然のような顔をして受け、それでいてこうも簡単に裏切り者とその口で彼を糾弾するのだから。
まぁ、頭が足りないだけでシュナイゼルに踊らされたともとれるが…これをあの子が知ったらどれほど傷付く事か。

「その女を学園に囲っていたのは、それが一番安全だからだよ。ゼロに繋がり有りと判断されれば殺される。扇も未練があるようだったし、安全に二人を再会させるのにはまだ時間が必要だった。なのに…これはどういう事なの、咲世子さん」

振り向いた朝比奈の目線の先で、一瞬柱の陰が動いた、と室内にいたものは思った。
けれど、それは陰ではなかった。
すっと一歩前に出た日本人女性に、室内にいた者は身構える。
気配など、今の今まで感じる事はなかったのだ。

「ゼロは命令、してないよね」
「私は、ゼロ様の為に扇副司令の動向を監視しブリタニア人のその女性を拘束するようにと……そちらの方から」

示されたその先には予想外の、けれど朝比奈にとってみれば予想通りの、蒼白な顔をしたディートハルトの姿があった。

「ディートハルト、まさか貴様…っ!!」
「へぇ…ゼロの為に、ねぇ。俺にはこの状況を悪化させるのに一役買ってるだけのように見えるけど?」
「いえっ、これは…その、」

しどろもどろに言い訳をしようとするも、状況は拙かった。
ディートハルト自身、まさかゼロが扇とヴィレッタの関係を既に熟知していたとは考えていなかったのだ。
先に手を回したつもりがこの状況に、口を噤んでいたのである。

「あと、その録音も状況が酷いよねぇ。散々人質にとったゼロの妹の命を盾にとった状況で、一対一の呼び出しに見せかけて待ち伏せ。あの状況下でフレイヤの話持ち出されても、挑発にはなるだろうけれど伝えた事にはならないんじゃないの?」
「まるで何処かで見ていたような口振りじゃないか」
「見てたし、聞いてたよ。まぁ、枢木スザクは一人で来いって行ったから盗撮だけにして一人で行かせたけど、こんな事なら一緒に行けば良かったと後悔したね」

あの後生き延びた朝比奈は、ナナリーと朝比奈を失って茫然自失だったゼロの部屋に駆け込んだ後、虐殺の事情も全て聞いた。
慰めて、目一杯甘やかして、漸く寝かしつけてきてみればこの状況だ。笑えない冗談だろう。

「結局17年間守り続け一年前にブリタニアに奪われ人質にとられた妹のナナリー総督は死亡。取り戻そうと躍起になっていた唯一の家族は、永遠に奪われた。母親と同じくブリタニアに、ね」

ブリタニアを恨んで当然だった。
けれど、それと同じくらい日本を取り戻そうと必死になってくれた事が嬉しかった。
それは誰の為でもない、今は何より自分の為だと知っているから。

守りたかった。
彼の願いも、理想も、漸く安らげるようになったこの場所も。
なのに、この男がそれを壊そうとするならば。
朝比奈はこの偽りの仮面など、いくらでも砕いてみせる。
どんな事でもしてみせる。
ルルーシュを、ゼロを、朝比奈は愛しているから。

だから、選別しなければならない。
敵は、殲滅しなければ。
敵がどの程度まで入り込んでいるかは把握していた。
恐らくシュナイゼルが朝比奈とゼロの関係に何かあると勘付いているだろう事も。
ならば、朝比奈が居なくなれば?
それもその衝撃でゼロが不安定な時を狙えば?
きっと、動く。
賭けにも近かったが、それは、確信だった。
そして今、目の前に確かにある手ごたえ。
盤上で王手をかけたのは、果たして誰か、もう分かるだろう。

「残念だったねー、俺が死んで、ゼロが弱っている時なら上手くこの場の人間を言いくるめてゼロを始末してしまえるとでも思ったんだろうけれど……、」

残念、俺は生きている。

ゆっくりと身体を扉から離すと、朝比奈はシュナイゼルに向き直る。
それを真正面から捕え、シュナイゼルはザァッと血の気が一気に引いていくのを感じた。
それは、昏く冷たく感情の全てを喪失したように、絶対零度の笑みを浮かべていて。
てのひらで動かされていたのがどちらだったのか、シュナイゼルは確かな確信をもって理解した。
そして同時に目の前の男の認識を改める。
朝比奈省吾は、シュナイゼルが思う以上に危険で、恐ろしい男であった、と。

「あの子がまさか、全てを話している相手がいるとはね」
「紙面だけで把握できないなんて、それでゼロの率いるこの黒の騎士団に喧嘩を売るなんて馬鹿のする事だよ」
「違いない」

そう頷くシュナイゼルは、既に諦めの境地に達していて。
溜息とともに深く椅子へ身を沈めれば、朝比奈はちらりと藤堂へ目配せし藤堂もそれに頷く。

「シュナイゼル及びブリタニア勢を拘束しろ」
「え、でも…」

口籠る者達は、それでもやはりゼロの不審を拭い切れていないらしく、それに朝比奈は眉間に皺を刻む。

「ゼロは、騎士団の誰が死んでも、いつも陰で泣いてたよ」
「ゼロが…?」
「あの子は騎士団の人間の為にも、出来るだけ確かな形で早く日本を取り戻そうと必死だった」

玉城の使い込みだって、結局いつもどうにかしてくれてたでしょう?と朝比奈が首を傾げると、そういえば、と幹部達も皆頷いた。
確かにゼロは、陰で何を言われようとも、その行動は正しく、ただ怒るだけではなくいつも何かしらフォローしてくれていた。
自分達より仕事が忙しかったにも関わらず、だ。
今更ながら自分達がどれほど彼から恩恵を受けていたか自覚した幹部達は、裏切ろうとした自分達の行いに青褪める。

「ブリタニア宰相閣下を捕虜にすれば、形成はこちらが上回る」
「わかった」

坦々と事実を述べる藤堂に、扇は頷くと他の者に指示を出し、ブリタニア勢を手際良く拘束していく。
ディートハルトの処罰は後だ。
情報の核であるこの男の処罰は、ゼロに指示を仰いだ方がなければ色々と拙いのだ。

「朝比奈、無事だったのだな」
「えぇ、怪我も大した事ないですし、すぐにでも戦えますよ」
「そうか……すまなかったな」

最後は緊張を帯びた声で告げれば、朝比奈は肩を竦めてみせた。
そこにいたのは、朝比奈だった。
いつも通りの、飄々とした朝比奈。
けれど、幹部達が知らない事実を藤堂は知っている。
先程の朝比奈こそが、真実彼の本性であるという事を。
普段は面倒がって、能ある鷹の如く爪を隠す男は、本当に大切なものの為にしかその力を使わない。
ならばこそ、朝比奈にとってゼロは真実大切なのだろう。

「それは、ゼロに言ってあげて下さい」
「あぁ、そうだな……ところで、」

それは、聞いて良い事なのか分からなかった。
けれど今聞かねば後で気まずいような気がして、藤堂は少し重くなった口を開く。
そこから飛び出す問い掛けを、朝比奈は何となく予想はしていたのだが。

「お前とゼロは、いったいどういった関係なんだ?」
「恋人、ですよ。七年前の事、藤堂さんも知っているでしょう?」

七年前から、朝比奈はルルーシュが好きだった。
その熱愛ぶりは、藤堂もよく知っていた。
先程の話で、藤堂は後でゼロがそのルルーシュと同一人物である事に気付いた。
だから、朝比奈の行動には納得がいったのだが。

「付き合って、いたのか?」
「頑張りましたから……本気、でしたし」

そう言って少し愛おしげに眼を細めるその顔を、藤堂は懐かしいものを見るように視界に収めた。
ブリタニア元皇族と日本の軍人、それ以前に男同士である彼と朝比奈が結ばれる事などありはしないだろうと思っていたのだが…運命とは不思議なものだ。
まさかその彼を首領にレジスタンスとなり、そのアジトで朝比奈と彼が付き合い出す事になるとは。

「尋問はもう少し後だろう。お前は、彼の所へ行ってやれ」
「はい、藤堂さんも御気をつけて!」

元気にそう返すと朝比奈は、すぐに踵を返して通路を駆けだした。
シュナイゼルは拘束し、ブリタニアへのカードは交渉増えた。
皇帝は現在行方不明ならば、ブリタニアを落とすのは時間の問題だろう。
早く、あの子を安心させてあげたかった。
今回の戦闘で身も心も傷付いたあの子に、もう大丈夫だと。
あの子が…ルルーシュが笑ってくれるならば、朝比奈はもう他には何も要らないから。

「君が大切だというなら、俺にとってもそれは大切なんだよ」

ルルーシュが嬉しいならば、それは朝比奈にとっても嬉しいことで。
ルルーシュが幸せならば、それは朝比奈の幸せだった。
それは、七年前も今も変わらず。
いや、きっともっと酷くなった。
例え相手が誰であろうと、あの子を傷つけるならば、きっと。

「二度目は、ないよ」

ボソッと零れたその声は、低く昏い匂いを漂わせて。
くすり、と次いで笑みが落ちる。
その笑みで、全ての闇を拭い去ったかのように朝比奈は次の瞬間には晴れ渡るような笑顔を浮かべて。
数回の、ノック。
すぐに返される入室許可に、その眼は幸せに笑み細まって。

「ゼロ、ただいまー。ちょっとあっちが騒がしくって、事態収拾させてたら遅くなっちゃってごめんね?」

するりと部屋へ滑り込んだその姿からは、先程の冷たい匂いなど全く感じる事はなく。

「御帰り、朝比奈」
「まだ寝てても良いんだよ?疲れたでしょ、色々」
「大丈夫だ、そう休んでもいられないからな」

楽しげに交わされる会話は、やがて自動で閉ざされた扉の防音で、ブツリと途切れ。
やがて通路には静寂が取り戻されたのだった。


後でその事態を知ったカレンが怒り心頭でやってきて、幹部が謝罪大会を繰り広げて大騒ぎになるのは、もう少し先の…御話。



END
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