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GLASS Fermata

基本、朝ルル中心、in騎士団なルル受ギアス小説サイト。詳しくは【First】をご覧下さい。日常的呟きとか、考察とか、ヨロヅにイラストとか付いたりするかも。
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  • 04/30/06:17

夜も眠れない

朝比奈×ルルーシュです。
2010年7月頃朝ルルに飢えていた時書きなぐったもの。
夏コミに無料配布したものの一つです。







甘やかに、彼は笑う。
その笑みの破壊力を、自覚せずに。
無意識に誰彼構わず惹きつけてしまうから。
いつも、傍にいない彼に心配になって。





夜 も 眠 れ な い





ぎゅうっ、と。離れない腕が其処にあった。
まるで一つの塊になろうとするように。
離れたくないと駄々を捏ねる子供というよりも、生命の活動に欠乏していたものを、必死になって吸収しようとしているような。
飢えにも似た、渇望。
剥がそうにもできない剣幕が、そこにはあって。

「省吾さん。どうか、したんですか?」

常にないその様子に、こてん、と首を傾げて問うてみた。
癖の無い綺麗な黒髪がさらさらと涼やかな音を奏でて、白く滑らかな首筋を露わにする。
動いた空気にのる、ほんのり甘いルルーシュの匂い。
それに少し、朝比奈の気持ちも落ち着いた。
同時に愛おしさで胸がぎゅうっと締め付けられて。
更にその気持ちは、募るばかり。

「…笑わないで」
「…ぇ、?」

ぽつり、と落ちた言の葉にルルーシュは思わず目を見張る。
首筋に埋まった俯いた顔は決してみる事はできなかったけれど、苦しげなその音は、同じくルルーシュの胸にツキリと鋭い何かを突き刺して。

「俺以外の誰にも、そんな可愛い顔、みせないで」

擦れた音で吐きだされた願いは、あまりにも子供でも分かるほどの無理難題だったけれど。
許しを請う相手に縋る手は、必死だった。
何を不安に思っているのか分からないルルーシュですら、その願いを受け入れてしまいそうなほど。

「省吾、さん」
「ごめんね、ルルーシュ君。本当はそんなの無理だって、子供みたいな事言っているって、頭では分かっているんだ。でも…、」

彼の笑顔を見る度、喜びと反対に過るのは陰。
愛おしさが募れば募るほど。
大切な存在になればなるほど。
この存在を、いつか奪われるのではないかと不安になる。
彼を失った事を考えて、気が狂いそうになるほど。
この綺麗で可愛くて優しい存在が、大切で、大好きで、愛おしくて。

「俺以外にも君の事を好きになるやつは、たくさん居るから」

そしてこれからもっと、その数は増えていく。
それは予想などではなく、限りなく現実に近い事実で。
この存在を奪う為に、いつか狂気に取り付かれる者が現れてもおかしくはない。
自分が居ない場所で、彼を失うかもしれない恐怖。
手の届かない場所へ、奪われるかもしれない嫉妬。

「君を離したく、ないんだ」

気が、狂いそうになる。
加減などできなくて、ぎゅうっと彼を抱き締めた。
ルルーシュならばきっと、苦しかったにきまっている。
なのに、彼は朝比奈を決して責めたりはしなかった。
ふぅわりと。不意にその白く細い手は朝比奈の頭にのせられて。
その緑がかった黒い髪を梳くようにゆっくりと撫でる。
落ち着いていく、心。

「俺は此処に、いますよ」

省吾さんの隣に、いるでしょう?

くすり、と鈴を転がすように可愛らしい笑みが零れる音を聞いた。
ふっ…と緩んだ腕の中で、伸びた腕がその童顔を持ち上げる。
ようやく合わさった視線に、安堵するように微笑んで。

「俺が愛しているのは、この先共に生きたいと願うのは、省吾さんだけですよ?」

そんな風に、愛を囁くのだ。
いつのまに、自分はこんなに単純になってしまったのだろう、と朝比奈は思った。
依存して、欲して、子供のように無様に駄々を捏ねて、嫉妬して。
気が狂いそうになるほど、悲鳴をあげて痛んだ心は。
そうしてその笑顔と些細な言葉で、これほどまでに心は羽の如く軽やかになってしまえるのだ。
なんて単純で、一途な自分。
どちらが大人で子供かなんて、分からないと言われるのも無理はない。

「…好きだよ」
「えぇ」
「すごーく、すっごくすっごくすごく凄くすごぉ~~~っく、誰よりも俺は、君を愛しているよ」
「はい、そうですね」

決してその想いをルルーシュはからかう事などせずに、全部、受け止めた。
大切な、感情だというように。
大切な、言の葉だとでもいうように。
全部全部受け止めて、抱き締めるから。

「だから絶対、もう、離してあげられないからね」

朝比奈はますます、ルルーシュを愛おしく感じてしまうのだろう。

「絶対、ですよ」

それすらも許してしまうルルーシュが、泣きたくなるほど大切だと朝比奈はいつも思い知らされるから。

「約束、するよ」
「ん…っ!」

感謝の想いを愛おしさに込めて、朝比奈は濡れた甘いその唇に誓いの接吻を落としてみせるのだった。


失う絶望よりも、今は目の前の君が愛おしい…なんてね。



END
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