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見返り無き感情*後
という訳で、後篇ですー。
なーんか、朝比奈さんがちょっと詐欺な気がしてきたよーな。
次回はもうちょっと、欲張りな朝比奈さんが書きたいなー。
今回はわりと、甘みに欠ける気がします。
あと、もうちょっとこー、つじつま?とか好きになった経緯とかが曖昧過ぎました。
すみません。
それでは、ほのぼの(?)な朝ゼロです。
どうぞー!
「っ朝比奈、何を!?」
「大丈夫、答えてくれないなら強制的に休ませるだけだから。ちゃんと君が部屋で休むのを見届けたら戻るよ」
「私には、まだ仕事が!」
「だーかーら、まだ分かんないの?君が今倒れた方が困るの!て言うか、俺が心配だからヤメテクダサイって言ってるの!!」
何故此処まで言って伝わらないのか、と内心溜息を吐きながら。
朝比奈が少し自棄気味に叫んだそれに、担がれた身体がビクッと震える。
大人しくなるか、と思った矢先に、信じられないと言いたげな声が仮面から零れた。
「…心配?……誰を?」
「だから、ゼロが心配なのっ、俺が!」
「……何故?」
在り得ない、とでも言いたいのだろう。
そこまで言えてしまうゼロに、朝比奈は何故か悔しいような悲しい想いが胸中を渦巻いた。
自分を蔑ろにして、仕事ばかり優先するゼロ。
それは司令官としてある意味正しい姿の筈なのに、朝比奈にはそれがどうしても許せなくて。
軽すぎる体重が、どうしようもなく胸を締め付けて。
頼りにすらされない自分自身が、あまりにも不甲斐無かった。
別に、素性なんてどうだって良いのに。
玉城だって他の幹部だって、仮面を外せなんて言うのは、きっともっと信頼して欲しいだけで。
うぅん、他の奴なんてどうでもいい。
俺に、もっと頼ってよ。
いつも息を張り詰めてばかりいないて、もっと安らいでほしいだけなのに。
もっと、自分を大事にして欲しいだけなのに。
「俺が君の事、心配しちゃ駄目なの?」
「お前達四聖剣は、藤堂の心配をすべきだろう?あいつだって最近は仕事量も増えて参ってきているはずだ」
「そうやって、ゼロはいっつも自分以外の心配ばかりするよね、だったらその分俺が代わりに君の心配、しても良いでしょう」
聡いくせに自分自身に鈍感すぎる君だから、それなら代わりに誰かが君に対して敏くなってあげる。
その誰かが俺だって、別に構わないでしょう?
それでも、理解はできなかったのだろうけれど、戸惑いはあったけれど。
きっと伝わったのだろう。
抵抗する腕が止んだ後に、仮面越しに小さな苦笑が漏れて。
きっと彼は、ふんわりと笑った。
だって空気があまりにも柔らかだったから。
「……お前も、変な奴だな。こんな仮面の男の心配などして何が楽しいんだ?」
ほんの少し、きっと少し。
それでも近づけた気がしたその距離に、暖かさに、胸がぎゅぅっつと締め付けられて。
この感情が、分らないなんて言うほど子供じゃない朝比奈は、同時に理解してしまった。
あぁ、なんだ。
理由はなんて簡単な。
でも、あまりに意外過ぎて気付かなかっただけで。
心は、ずっと前から分かっていた。
だって今、心はこんなにも軽やかで、スキップするように喜び跳ねる音がするから。
「ゼロ、俺、君に恋してるみたいです」
「……………はぁ?」
そう、理由は、この感情の名はとても簡単で。
その名は恋、そして愛。
でもやっぱりゼロには意外過ぎたみたいで、声はすっとんきょうなものが返ってきたけれど。
「………すまない、よく聞き取れなかったようだ」
「ゼロ、俺、君が好き、恋してるみたいです、愛してま」
「…っもう、黙れ!ああ愛とか気軽に言うな!!」
わたわたと、今度は慌てたように暴れ出したゼロに、くすくすと朝比奈は笑う。
怒った口調のくせに、それはどう聞いても照れ隠しで。
思った事が、思わずポロッと口から零れてしまった。
「ゼロ、可愛いなぁー」
「!?…っ、男に可愛いとか、言うなッ!」
「えー、可愛いですよ、ゼロ。本当は優しいのも知っているし、そんなとこも含めて大好きなんです」
「……私は、お前に何も返してやれないぞ」
不意に言葉に詰まったように、ぎゅっと朝比奈の軍服を握りしめて吐き出された言葉。
それに朝比奈は、そっと目を細める。
あぁ、この人はなんて優しい人なんだろう。
そうやって、いつも他人の心配ばかりして。
付き離す事で、遠ざける事でしか、守る術を知らないのなら。
それはなんて、哀しくも優しい愛だろう。
「違うよ、ゼロ。返してほしいとか、そうじゃなくて」
「…では、なんだ。恋とは、相手に見返りを求めるものだろう」
「俺は、ただ君を守りたいんだ。俺が勝手に好きになって、ただ愛してる。笑ってほしいし、幸せになってほしいんだ」
そりゃ、君が好きになってくれたら嬉しいけれどね。
そう告げればゼロは、今度こそ静かになって、更に強く軍服を握りしめたまま呻いてしまった。
別に、君を苦しめたい訳じゃない。
困らせたいわけでもなくて。
ただ、好きなだけ。
それが、迷惑なのかもしれないけれど。
「だから俺の気持ちだけは、否定しないで下さいね」
「………わかった、」
途方に暮れた子供のように、返ってきた迷い子のような声音。
それに今は満足する事にして、朝比奈はそっとゼロを私室の前に降ろした。
少し顔を背けたままのゼロに、内心少し苦笑して。
「ちゃんと、寝て下さいね」
「小一時間だけだ」
「もう一声!」
「…二時間だ。これ以上は譲らん」
それだけ言うと、ゼロはさっさとパスワードを高速で打ち込み室内を開けた。
そのまま入って行くのかと思うと、一度ピタッと立ち止まる。
それを不思議にどうしたものかと朝比奈は首を傾げた。
「……ゼロ?」
「……………ありがとう」
ポツッと。本当に微かではあったけれどそんな声が返ってきて。
目を丸くした朝比奈の鼻先で即座に扉は閉ざされた。
それでも気配は、まだ扉越しにあったから、嬉しさに緩む頬のまま微笑んで。
「ゼロ、俺が守りますから」
絶対守る、なんて格好付け過ぎかもしれないけれど。
本心から誓わせて欲しかった。
自覚した感情は、あっという間に身体中を蝕んで。
いつからだったから、理由なんて知らないけれど。
口から零れる音は、なんて甘く愛情に溢れた音なのか。
「愛してます」
否定しないで、受け止めてくれた。
それが凄く嬉しくて、胸を満たし一杯にして。
幸せだと、そう思えた。
そして君も幸せになってくれたら、どんなに嬉しいだろう。
「おやすみ、ゼロ」
だから君には、一度の休息を。
今の彼に必要なのは、安らかな眠りだろうから。
くるりと踵を返そうとした朝比奈は、次の瞬間、その声に足を止めた。
言葉の意味を噛み締めて、息を呑む。
「時間になったら、起こしに来い。その時は他の奴に頼まず、絶対、お前が来い」
絶対、と強調してから扉からゼロが離れる気配がした。
それに、口元だけではなく朝比奈は破顔して。
「まっかせて!絶対、仕事放り出しても来るから!」
「仕事は放りだすな!」
背後に怒鳴る声が聞こえたけれど、朝比奈は笑いながら元居た部屋へと駆け出した。
ほんの少し、近付いた距離。
それは錯覚ではなく、確かなものであると言ってくれたようで。
少しは、信頼されたのだろうか。
だったら嬉しいけれど、それは彼の心の領域をほんの少しでも貰えたようで。
「とりあえず、早く仕事片付けないとね!」
その前に、千葉に何やら詮索されそうで恐ろしい。
まずは仕事を放り出して千葉とゼロの二人に怒られないようにしなくては、と呟きながら朝比奈は弾む足取りで廊下を駆けて行ったのだった。
END
なーんか、朝比奈さんがちょっと詐欺な気がしてきたよーな。
次回はもうちょっと、欲張りな朝比奈さんが書きたいなー。
今回はわりと、甘みに欠ける気がします。
あと、もうちょっとこー、つじつま?とか好きになった経緯とかが曖昧過ぎました。
すみません。
それでは、ほのぼの(?)な朝ゼロです。
どうぞー!
「っ朝比奈、何を!?」
「大丈夫、答えてくれないなら強制的に休ませるだけだから。ちゃんと君が部屋で休むのを見届けたら戻るよ」
「私には、まだ仕事が!」
「だーかーら、まだ分かんないの?君が今倒れた方が困るの!て言うか、俺が心配だからヤメテクダサイって言ってるの!!」
何故此処まで言って伝わらないのか、と内心溜息を吐きながら。
朝比奈が少し自棄気味に叫んだそれに、担がれた身体がビクッと震える。
大人しくなるか、と思った矢先に、信じられないと言いたげな声が仮面から零れた。
「…心配?……誰を?」
「だから、ゼロが心配なのっ、俺が!」
「……何故?」
在り得ない、とでも言いたいのだろう。
そこまで言えてしまうゼロに、朝比奈は何故か悔しいような悲しい想いが胸中を渦巻いた。
自分を蔑ろにして、仕事ばかり優先するゼロ。
それは司令官としてある意味正しい姿の筈なのに、朝比奈にはそれがどうしても許せなくて。
軽すぎる体重が、どうしようもなく胸を締め付けて。
頼りにすらされない自分自身が、あまりにも不甲斐無かった。
別に、素性なんてどうだって良いのに。
玉城だって他の幹部だって、仮面を外せなんて言うのは、きっともっと信頼して欲しいだけで。
うぅん、他の奴なんてどうでもいい。
俺に、もっと頼ってよ。
いつも息を張り詰めてばかりいないて、もっと安らいでほしいだけなのに。
もっと、自分を大事にして欲しいだけなのに。
「俺が君の事、心配しちゃ駄目なの?」
「お前達四聖剣は、藤堂の心配をすべきだろう?あいつだって最近は仕事量も増えて参ってきているはずだ」
「そうやって、ゼロはいっつも自分以外の心配ばかりするよね、だったらその分俺が代わりに君の心配、しても良いでしょう」
聡いくせに自分自身に鈍感すぎる君だから、それなら代わりに誰かが君に対して敏くなってあげる。
その誰かが俺だって、別に構わないでしょう?
それでも、理解はできなかったのだろうけれど、戸惑いはあったけれど。
きっと伝わったのだろう。
抵抗する腕が止んだ後に、仮面越しに小さな苦笑が漏れて。
きっと彼は、ふんわりと笑った。
だって空気があまりにも柔らかだったから。
「……お前も、変な奴だな。こんな仮面の男の心配などして何が楽しいんだ?」
ほんの少し、きっと少し。
それでも近づけた気がしたその距離に、暖かさに、胸がぎゅぅっつと締め付けられて。
この感情が、分らないなんて言うほど子供じゃない朝比奈は、同時に理解してしまった。
あぁ、なんだ。
理由はなんて簡単な。
でも、あまりに意外過ぎて気付かなかっただけで。
心は、ずっと前から分かっていた。
だって今、心はこんなにも軽やかで、スキップするように喜び跳ねる音がするから。
「ゼロ、俺、君に恋してるみたいです」
「……………はぁ?」
そう、理由は、この感情の名はとても簡単で。
その名は恋、そして愛。
でもやっぱりゼロには意外過ぎたみたいで、声はすっとんきょうなものが返ってきたけれど。
「………すまない、よく聞き取れなかったようだ」
「ゼロ、俺、君が好き、恋してるみたいです、愛してま」
「…っもう、黙れ!ああ愛とか気軽に言うな!!」
わたわたと、今度は慌てたように暴れ出したゼロに、くすくすと朝比奈は笑う。
怒った口調のくせに、それはどう聞いても照れ隠しで。
思った事が、思わずポロッと口から零れてしまった。
「ゼロ、可愛いなぁー」
「!?…っ、男に可愛いとか、言うなッ!」
「えー、可愛いですよ、ゼロ。本当は優しいのも知っているし、そんなとこも含めて大好きなんです」
「……私は、お前に何も返してやれないぞ」
不意に言葉に詰まったように、ぎゅっと朝比奈の軍服を握りしめて吐き出された言葉。
それに朝比奈は、そっと目を細める。
あぁ、この人はなんて優しい人なんだろう。
そうやって、いつも他人の心配ばかりして。
付き離す事で、遠ざける事でしか、守る術を知らないのなら。
それはなんて、哀しくも優しい愛だろう。
「違うよ、ゼロ。返してほしいとか、そうじゃなくて」
「…では、なんだ。恋とは、相手に見返りを求めるものだろう」
「俺は、ただ君を守りたいんだ。俺が勝手に好きになって、ただ愛してる。笑ってほしいし、幸せになってほしいんだ」
そりゃ、君が好きになってくれたら嬉しいけれどね。
そう告げればゼロは、今度こそ静かになって、更に強く軍服を握りしめたまま呻いてしまった。
別に、君を苦しめたい訳じゃない。
困らせたいわけでもなくて。
ただ、好きなだけ。
それが、迷惑なのかもしれないけれど。
「だから俺の気持ちだけは、否定しないで下さいね」
「………わかった、」
途方に暮れた子供のように、返ってきた迷い子のような声音。
それに今は満足する事にして、朝比奈はそっとゼロを私室の前に降ろした。
少し顔を背けたままのゼロに、内心少し苦笑して。
「ちゃんと、寝て下さいね」
「小一時間だけだ」
「もう一声!」
「…二時間だ。これ以上は譲らん」
それだけ言うと、ゼロはさっさとパスワードを高速で打ち込み室内を開けた。
そのまま入って行くのかと思うと、一度ピタッと立ち止まる。
それを不思議にどうしたものかと朝比奈は首を傾げた。
「……ゼロ?」
「……………ありがとう」
ポツッと。本当に微かではあったけれどそんな声が返ってきて。
目を丸くした朝比奈の鼻先で即座に扉は閉ざされた。
それでも気配は、まだ扉越しにあったから、嬉しさに緩む頬のまま微笑んで。
「ゼロ、俺が守りますから」
絶対守る、なんて格好付け過ぎかもしれないけれど。
本心から誓わせて欲しかった。
自覚した感情は、あっという間に身体中を蝕んで。
いつからだったから、理由なんて知らないけれど。
口から零れる音は、なんて甘く愛情に溢れた音なのか。
「愛してます」
否定しないで、受け止めてくれた。
それが凄く嬉しくて、胸を満たし一杯にして。
幸せだと、そう思えた。
そして君も幸せになってくれたら、どんなに嬉しいだろう。
「おやすみ、ゼロ」
だから君には、一度の休息を。
今の彼に必要なのは、安らかな眠りだろうから。
くるりと踵を返そうとした朝比奈は、次の瞬間、その声に足を止めた。
言葉の意味を噛み締めて、息を呑む。
「時間になったら、起こしに来い。その時は他の奴に頼まず、絶対、お前が来い」
絶対、と強調してから扉からゼロが離れる気配がした。
それに、口元だけではなく朝比奈は破顔して。
「まっかせて!絶対、仕事放り出しても来るから!」
「仕事は放りだすな!」
背後に怒鳴る声が聞こえたけれど、朝比奈は笑いながら元居た部屋へと駆け出した。
ほんの少し、近付いた距離。
それは錯覚ではなく、確かなものであると言ってくれたようで。
少しは、信頼されたのだろうか。
だったら嬉しいけれど、それは彼の心の領域をほんの少しでも貰えたようで。
「とりあえず、早く仕事片付けないとね!」
その前に、千葉に何やら詮索されそうで恐ろしい。
まずは仕事を放り出して千葉とゼロの二人に怒られないようにしなくては、と呟きながら朝比奈は弾む足取りで廊下を駆けて行ったのだった。
END
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