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Made for you!!~01
バレンタイン文です。
朝比奈×ルルーシュです。
朝比奈にのみゼロバレ済み。
まだ付き合ってません。
友達以上恋人未満の両片思い。
そんな二人のバレンタイン奮闘記です。
むしろ頑張れひなちゃん!!な内容です。
それでもOK!大丈夫な方は続きからどうぞ!!
SIDE:朝比奈
人肌恋しくなるような、寒さに震える季節だった。
動物ならば眠りにつき、春の訪れを待つ季節。
だからこそこの時期普段通りの活動を止めない人間は、何よりも人の温もりと、春の訪れを渇望するのかもしれない。
この時期多くの人々が待ち望む春を、人は〝恋〟といった。
「はぁ…、」
深い深い溜息が落ちる。
けれど落ちた溜息は、室内の慌ただしくも賑やかな喧騒に掻き消され、誰にも拾われる事はなかった。
それが、今では彼の、朝比奈省吾の日常。
いつも行動を共にする事の多い四聖剣も最初こそ苦言を強いたが、今はもう苦笑だけで何も言ってはこなくなった。
恐らく長年の付き合いがある彼等だからこそ、察しているのだろう。
それが有り難くもあり恥ずかしくもあり面倒でもあったのだが。
「うー…」
「何だ朝比奈、最近やる気無ぇな」
仕事をサボる口実でも探していたのだろう。
先程から机上の書類を片付ける手が御留守になっていた玉城は、朝比奈が上げた小さな唸り声を耳聡く聞き付けた。
何でお前はそういうどうでも良い事だけ気付くんだ。
そうは思っても、気付かれてしまったものはどうしようもない。
面白そうな事はとことん絡む、それが玉城という男である。
ニヤニヤとしながら近付いてくる顔に、朝比奈は嫌な予感しか覚えなかった。
「もしかしてお前も明日は一個も貰えねぇクチか?」
「違うし、そんなのどーでも良いよ。玉城の馬鹿」
再び、落ちる溜息。
馬鹿とはなんだ!と、騒ぐ玉城を面倒臭そうに横目で見れば、今度はすぐ傍で作業していた杉山が振り返る。
正直、杉山は顔もそれなりに良くバレンタインでは幾つものチョコレートを獲得できる側の人間であった。
恐らく自分と同じ側だろうと思っていた朝比奈が明らかに気落ちしている様子に不思議そうに首を傾げると、玉城に煩いと怒鳴ってから疑問を口にする。
「貰えるなら男としては当日まで色々士気上がるだろ、普通」
「だってさー、本命からは絶対貰えないって分かり切ってるんだよー?当日本人の姿見るかもって思うと、憂鬱で仕方ないじゃん」
なのに、奇跡起きないかなとか思っちゃうしさー、なんてボソリと呟く朝比奈に、一瞬止まる室内の空気。
予想以上に注目を受けていた事に気付いた朝比奈は、失態だったかと苦い顔で眉を寄せて。
さり気なく聞き耳を立てていた室内の人間は、次の瞬間驚愕の声を上げた。
何故人間は、こういった人の恋愛話が好きなのだろう。
昔から藤堂至上主義で生きてきた朝比奈にはイマイチ理解できない人間心理に、面倒だなと内心呟いた。
普段は気付かれないように気を遣っていたのだが、どうにも噂の恋人達の祭典が近付いている所為か、通常より酷くなっていたようだ。
「えっ、朝比奈さんて好きな人とか居たんですか!?」
「ていうか、当日見るって団員の誰かとか!?」
問われたその一言が、朝比奈にザックリ突き刺さる。
団員、そう団員ならばそこまで問題はなかったのだろうか。
否、年齢差や性別を考えれば問題だが、しかし団員ならばもっと気軽に会ったり顔を合わせられたのかもしれない。
それが出来ないからこそ、彼は仮面を被ったのだろうけれど。
気軽に会えない距離が、これほど寂しいと思った事は無かった。
無意識に触れたズボンのポケットにある携帯電話。
それに登録された電話番号。
これさえなければ、自分は彼の声を聞く事すら儘ならなくて。
その繋がりすら失えば、次の瞬間には二度と会う事すら叶わぬ不安定な関係なのだと、今更ながら朝比奈は自覚する。
バレンタイン当日だって、会える確証がある訳もなく。
「……団員じゃ、無いよ」
「…朝比奈、無駄に落ち込むな。こちらが疲れる」
「分かってますけどー…」
千葉に釘を刺されながらも再び唸る彼は、重症だった。
それは誰からみても明らかで。
とても冗談で揄う事のできない朝比奈の嘗て無い様子に、幹部達は戸惑った。
普段見慣れた藤堂以外の何事にも囚われず飄々とした彼以外の、初めて見る姿がそこにはあった。
考えていたより真剣なその想いに、あの玉城すら軽口を叩けず戸惑っている。
しかし、上には上がいた。
この場で唯一人、状況の深刻さを理解できなかったらしいディートハルトが不可解そうな顔付きで、作業する手を止め口を挟む。
「日本の方は女性からしか渡さないのですか?」
「日本は…て、ブリタニアでは違うの?」
「ブリタニアでは男女関係無く愛する人に花や贈り物をしますよ、贈り物にも制限はありません。勿論、手作りの菓子類も可です」
「へぇー」
初めてしった風習の違いと、少し変わった会話の流れに周囲の空気も和らいだ。
なるほど、それならば日本のように貰える貰えないで深刻に悩む心理は理解し難いかもしれない。
戻った空気に調子を取り戻した玉城が、不意に笑って声を上げた。
それは特に何も考えない彼だからこそ、ケロリと簡単に言えた事ではあったのだが。
「だったらよぉー、朝比奈も待ってるだけじゃなくて自分で何か作ってやれば良いじゃねぇか」
「……へ?」
貰えないならば、あげれば良い。
発想の逆転。
ポロリ、と。
目から鱗が落ちたようだった。
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