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見返り無き感情*前
前言っていた、ありがちなベッタベターなネタのお話です。
ゼロバレしません。
朝ゼロ、とうより朝→ゼロです。
恋愛未満のような、両想いのような、そんな感じ。
よくあるギアスの同人小説の書き方で書いていたのですが、後半に入ってから、だんだん自分の書き方になってきてしまいました。
うーん、あいまい。
あ、でもギアスって、前書いてたジャンルとちょっと違うので、難しかったのですが、ちょっとこれのおかげて自分なりの朝ゼロ(ルル)の書き方が理解できた気がします。
というわけで、朝ゼロで騎士団内、ちょっぴり千葉さんと卜部さん含む、です。
長いので前後篇でわけました。
それでは、どうぞー!
それは特に、大した問題ではない物音であったのかもしれない。
けれど、どうしても無視できなかった事も事実で。
「…なーんか、気になる」
「あ?何の話だ?」
ボソッと思わず零れた本音は、偶然にも隣に座る卜部に拾われてしまっていたらしく。
思わず気まずげに、少し眉間に皺を寄せる。
まさか言えない。
どうにもゼロ、というか彼という個人が気になるなんて。
この前偶然にも会議の後、質問があって追い掛けた事がある。
その際に少しふらついた足取りで、思わず壁に手を着くゼロを見てしまって以来だろうか。
普段は冷徹なサイボーグ説まであがる人間味の欠片も見せないあの彼が、だ。
確かにそれは大なり小なり衝撃であろう。
考えてみれば一応人間だしね、なんて本人が聞けば失礼極まりない事を思うと同時に…
(そういえば体力無いよなー)
…などという思考で観察していたのだが。
ゼロは細い。
最初に気付いたのは資料を渡す時の腕で、次は優雅に組む足。
演説する時などにマントから露わになる腰は、もう
誰が何と言おうと“折れそう”の形容詞を付けるべき細さだ。
前回の戦闘で偶然見たスカーフの下の首もやはり細かったし、破れた手袋の下から除く手は驚くべき白さだった。
一瞬ブリタニア人だから?と思ったものの、ディートハルトを見ればそれは否定に変わる。
何よりゼロの手の方がずっと綺麗でほっそりとした指をしていた。
……なんて考えてしまうのは、つまりここ暫くずーっとゼロの事を見ていたからで、それはもう無意識の域を越えているというか。
「…何で気になるんだろう」
最早、自分でも分からない。
あえて上げるとすれば年齢だろうか、と朝比奈は思った。
身体を見ただけの判断だが、ゼロは恐らく朝比奈より若い、男だ(さすがに骨格からして女性ではないと思うが、細過ぎるので断定できない)
まさか、とは思うが紅月がすんなりエースパイロットとして認められている事を思えば、
彼自身もまだ成人していない子供の可能性はある。
それならば、種族も性別も年齢も関係無い豪語する実力主義も納得がつくものだ。
だが、ここで問題なのは年下だから従えないという事ではない。
それほどに若い身であるからこそ、トップに立つ責務とは別にもう少し頼ってくれても良いのではないかという事なのだ。
観察していた為、ゼロが現在かなり多大な仕事を黙ってこなしているのを朝比奈は知っている。
陰ながら細かい場所で団員達に気を掛けている事もだ。
トップに立つ身としては当然、という者もいるかもしれない。
だが、短期間でエリア11最大に上り詰めこの烏合の集を纏め上げた実績を考えれば、それは並大抵のことではないはずだ。
何より、彼には表の顔がある。
いったい何処でやり繰りしているのかと、いつも首を傾げてしまう仕事量。
だからその努力を認めた朝比奈は、もうそれ程表だって敬愛なる藤堂の上に立つゼロをつ詰る事はしない。
しかし、認めたからこそ頼ってほしい部分は膨れるのだ。
特に、ここ最近明らかに疲労の増した様子を見れば。
「…ゼロって、働き過ぎだと思いません?」
「そうか?まぁ、俺等より仕事量があるのは認めるがよ」
卜部の言葉に、朝比奈は少し渋面をつくる。
ある、なんてものではない。
これは予想だが、ここ数日騎士団に泊まり込みで多忙極まりないゼロは、
下手をすればその間まともに休息をとっていないのではないだろうか。
そろそろ5日になるし、さすがに僅かなりとも食事や睡眠くらいはとっているだろうが。
恐ろしいのは、それを断言できるほど彼が休んでいるところを目にしていないという事だ。
「それに、動き鈍いし…」
「そうか?」
「何か、雰囲気が疲れてるっていうかー…」
「いつもと変わらなくねぇか?」
「でも、よく見るとふらふらしてて、倒れそうな気が…」
「………朝比奈」
それまで傍で沈黙を守っていた千葉が、深い溜息を吐いた。
それに己の失言を知った朝比奈は、あれー?とへらりとした笑顔で首を傾げる。
「最近おかしいと思っていれば、お前は…」
「あははー…えーっと、それほど気にしてる訳じゃないんだけど」
「最近、といっただろう。気付いてはいたから今更だがな」
「あー、道理で最近視線が痛いなーと」
「あ?何の話だ?」
全く話の流れが分からない卜部に、千葉は再び溜め息を吐く。
疲れのほどが分かるほど、重い。
その重さには、流石の朝比奈もひくりと笑った口端が痙攣した。
続きそうな言葉に慌てて書類を掴むと、座っていたソファから立ち上がる。
「ちょっと、藤堂さんに書類の確認行ってきますっ!」
「おいっ、朝比奈!…まったく」
逃げ出すようにラウンジを飛び出した背後で、明らかに苛立った千葉の舌打ちが聞こえた。
それに軽く青褪めながら、朝比奈は手元の書類を確認する。
大した書類ではなかったがそれでも藤堂の名を出せば、さすがに千葉も仕事の邪魔をしに追っては来ないだろう。
そう考えると、敬愛なる上司を逃げる為とはいえ使ってしまった事に申し訳なさが生まれた。
だが、それでも仕方がない。
例え説明を強要されたとて、朝比奈自身もこれほど気になる理由が分からないのだ。
「あーもう、これも全部ゼロのせいだ!」
「…私が、何だと?」
思わず叫び声を上げた朝比奈は、次の瞬間背後から聞こえてきた声に凍り付いた。
恐る恐る振り返れば、そこには見慣れた仮面がこちらを向いて佇んでいる。
しかも先程から疲労が増したと思っていたその身体からは、更に不機嫌なオーラまで漂っていた。
完全に、今の発言を聞かれていたらしい。
「…それで、何が私のせいだと?」
「あー…えっと、そういうのじゃなくってです、ね…」
「ならば、何だと?」
言葉を濁す度に不機嫌になっていく気配に、朝比奈はだらだらと内心冷や汗を流す。
まずい、この完璧に勘違いをされている状況を何とかしないことには、どう仕様もない。
追い詰められた朝比奈は、とにかく真っ正直に話す事に決めた。
その後の事は考えないことにしようと腹を括る。
「気になるんです、ゼロが」
「は?」
とりあえず馬鹿正直に言ってみれば、珍しく間の抜けた総司令の声が返ってきた。
だが、すぐに取り繕うと警戒の体制をとる。
「それは私の素性がという意味か?それとも顔の方か?」
「いや、多少は気になるっていえばなりますけど、それはどうでもいいって言うかー…」
「…どうでもいい?」
「うん、それはいいから」
訝しげな反応に内心苦笑しながら、朝比奈は頷く。
「だって、素性なんてたぶんブリタニア人て所認めちゃった時点で後は君が表でどんな身分だろうと仕事してようと関係無いし、だったら素顔なんてそれこそどうだっていい訳だし」
「そ、そういうものなのか?」
「俺はねー。それに藤堂さん助けて貰ったし、藤堂さん自身認めているし…まぁ、少し気にしてるっていえば年齢かなー?」
「年下ならば従えない、と?」
軍人である朝比奈ならば体つきを見ただけで年齢を把握できる事に気付いたのだろう。
探るような声音に、朝比奈は少し戸惑った。
そこまで自分は信用ないのであろうか。
だとしたら、少し傷付くかもしれないと感じた自分に朝比奈は内心驚いた。
「そうじゃなくって、君若いのに無茶し過ぎって事。もうちょっと俺とか頼ってくれても良いんじゃないのって思ってさ」
「頼る…だと?」
更にどこか微かに戸惑うよう声音が返ってきて、朝比奈は今度こそその不器用さに苦笑した。
明らかに考えていなかった、といった反応であったから。
「今もさー、君疲れてるでしょう?ここ数日まともに寝てる?最後に食事したのいつ?」
「…健康管理はしているつもりだ、問題ない」
「いーや、絶対疲れてる。動きも鈍いし」
「…お前の心配する対象は私ではない筈だ。四聖剣は藤堂の為に在るんだろう?その書類だってさっさと藤堂の所に持って行ったらどうなんだ」
あまりに自分に無頓着な発言に、朝比奈はむっとするとゼロに近づいた。
傍で見ると、やはり疲れが伺えるのは間違いではない筈だ。
少なくとも、朝比奈には分かる。
「別に、この書類は急ぎじゃないよ」
「…だとしても、朝比奈」
「無駄だよ、そんな事言っても」
そう言うと朝比奈はゼロの腕を掴み、そのまま一息に担ぎあげた。
ほぇあ、上がった悲鳴の可愛らしさに思わず和むと、歩きだす。
黒尽くめや仮面には恐ろしく似合わないが、悪くない。
ゼロバレしません。
朝ゼロ、とうより朝→ゼロです。
恋愛未満のような、両想いのような、そんな感じ。
よくあるギアスの同人小説の書き方で書いていたのですが、後半に入ってから、だんだん自分の書き方になってきてしまいました。
うーん、あいまい。
あ、でもギアスって、前書いてたジャンルとちょっと違うので、難しかったのですが、ちょっとこれのおかげて自分なりの朝ゼロ(ルル)の書き方が理解できた気がします。
というわけで、朝ゼロで騎士団内、ちょっぴり千葉さんと卜部さん含む、です。
長いので前後篇でわけました。
それでは、どうぞー!
それは特に、大した問題ではない物音であったのかもしれない。
けれど、どうしても無視できなかった事も事実で。
「…なーんか、気になる」
「あ?何の話だ?」
ボソッと思わず零れた本音は、偶然にも隣に座る卜部に拾われてしまっていたらしく。
思わず気まずげに、少し眉間に皺を寄せる。
まさか言えない。
どうにもゼロ、というか彼という個人が気になるなんて。
この前偶然にも会議の後、質問があって追い掛けた事がある。
その際に少しふらついた足取りで、思わず壁に手を着くゼロを見てしまって以来だろうか。
普段は冷徹なサイボーグ説まであがる人間味の欠片も見せないあの彼が、だ。
確かにそれは大なり小なり衝撃であろう。
考えてみれば一応人間だしね、なんて本人が聞けば失礼極まりない事を思うと同時に…
(そういえば体力無いよなー)
…などという思考で観察していたのだが。
ゼロは細い。
最初に気付いたのは資料を渡す時の腕で、次は優雅に組む足。
演説する時などにマントから露わになる腰は、もう
誰が何と言おうと“折れそう”の形容詞を付けるべき細さだ。
前回の戦闘で偶然見たスカーフの下の首もやはり細かったし、破れた手袋の下から除く手は驚くべき白さだった。
一瞬ブリタニア人だから?と思ったものの、ディートハルトを見ればそれは否定に変わる。
何よりゼロの手の方がずっと綺麗でほっそりとした指をしていた。
……なんて考えてしまうのは、つまりここ暫くずーっとゼロの事を見ていたからで、それはもう無意識の域を越えているというか。
「…何で気になるんだろう」
最早、自分でも分からない。
あえて上げるとすれば年齢だろうか、と朝比奈は思った。
身体を見ただけの判断だが、ゼロは恐らく朝比奈より若い、男だ(さすがに骨格からして女性ではないと思うが、細過ぎるので断定できない)
まさか、とは思うが紅月がすんなりエースパイロットとして認められている事を思えば、
彼自身もまだ成人していない子供の可能性はある。
それならば、種族も性別も年齢も関係無い豪語する実力主義も納得がつくものだ。
だが、ここで問題なのは年下だから従えないという事ではない。
それほどに若い身であるからこそ、トップに立つ責務とは別にもう少し頼ってくれても良いのではないかという事なのだ。
観察していた為、ゼロが現在かなり多大な仕事を黙ってこなしているのを朝比奈は知っている。
陰ながら細かい場所で団員達に気を掛けている事もだ。
トップに立つ身としては当然、という者もいるかもしれない。
だが、短期間でエリア11最大に上り詰めこの烏合の集を纏め上げた実績を考えれば、それは並大抵のことではないはずだ。
何より、彼には表の顔がある。
いったい何処でやり繰りしているのかと、いつも首を傾げてしまう仕事量。
だからその努力を認めた朝比奈は、もうそれ程表だって敬愛なる藤堂の上に立つゼロをつ詰る事はしない。
しかし、認めたからこそ頼ってほしい部分は膨れるのだ。
特に、ここ最近明らかに疲労の増した様子を見れば。
「…ゼロって、働き過ぎだと思いません?」
「そうか?まぁ、俺等より仕事量があるのは認めるがよ」
卜部の言葉に、朝比奈は少し渋面をつくる。
ある、なんてものではない。
これは予想だが、ここ数日騎士団に泊まり込みで多忙極まりないゼロは、
下手をすればその間まともに休息をとっていないのではないだろうか。
そろそろ5日になるし、さすがに僅かなりとも食事や睡眠くらいはとっているだろうが。
恐ろしいのは、それを断言できるほど彼が休んでいるところを目にしていないという事だ。
「それに、動き鈍いし…」
「そうか?」
「何か、雰囲気が疲れてるっていうかー…」
「いつもと変わらなくねぇか?」
「でも、よく見るとふらふらしてて、倒れそうな気が…」
「………朝比奈」
それまで傍で沈黙を守っていた千葉が、深い溜息を吐いた。
それに己の失言を知った朝比奈は、あれー?とへらりとした笑顔で首を傾げる。
「最近おかしいと思っていれば、お前は…」
「あははー…えーっと、それほど気にしてる訳じゃないんだけど」
「最近、といっただろう。気付いてはいたから今更だがな」
「あー、道理で最近視線が痛いなーと」
「あ?何の話だ?」
全く話の流れが分からない卜部に、千葉は再び溜め息を吐く。
疲れのほどが分かるほど、重い。
その重さには、流石の朝比奈もひくりと笑った口端が痙攣した。
続きそうな言葉に慌てて書類を掴むと、座っていたソファから立ち上がる。
「ちょっと、藤堂さんに書類の確認行ってきますっ!」
「おいっ、朝比奈!…まったく」
逃げ出すようにラウンジを飛び出した背後で、明らかに苛立った千葉の舌打ちが聞こえた。
それに軽く青褪めながら、朝比奈は手元の書類を確認する。
大した書類ではなかったがそれでも藤堂の名を出せば、さすがに千葉も仕事の邪魔をしに追っては来ないだろう。
そう考えると、敬愛なる上司を逃げる為とはいえ使ってしまった事に申し訳なさが生まれた。
だが、それでも仕方がない。
例え説明を強要されたとて、朝比奈自身もこれほど気になる理由が分からないのだ。
「あーもう、これも全部ゼロのせいだ!」
「…私が、何だと?」
思わず叫び声を上げた朝比奈は、次の瞬間背後から聞こえてきた声に凍り付いた。
恐る恐る振り返れば、そこには見慣れた仮面がこちらを向いて佇んでいる。
しかも先程から疲労が増したと思っていたその身体からは、更に不機嫌なオーラまで漂っていた。
完全に、今の発言を聞かれていたらしい。
「…それで、何が私のせいだと?」
「あー…えっと、そういうのじゃなくってです、ね…」
「ならば、何だと?」
言葉を濁す度に不機嫌になっていく気配に、朝比奈はだらだらと内心冷や汗を流す。
まずい、この完璧に勘違いをされている状況を何とかしないことには、どう仕様もない。
追い詰められた朝比奈は、とにかく真っ正直に話す事に決めた。
その後の事は考えないことにしようと腹を括る。
「気になるんです、ゼロが」
「は?」
とりあえず馬鹿正直に言ってみれば、珍しく間の抜けた総司令の声が返ってきた。
だが、すぐに取り繕うと警戒の体制をとる。
「それは私の素性がという意味か?それとも顔の方か?」
「いや、多少は気になるっていえばなりますけど、それはどうでもいいって言うかー…」
「…どうでもいい?」
「うん、それはいいから」
訝しげな反応に内心苦笑しながら、朝比奈は頷く。
「だって、素性なんてたぶんブリタニア人て所認めちゃった時点で後は君が表でどんな身分だろうと仕事してようと関係無いし、だったら素顔なんてそれこそどうだっていい訳だし」
「そ、そういうものなのか?」
「俺はねー。それに藤堂さん助けて貰ったし、藤堂さん自身認めているし…まぁ、少し気にしてるっていえば年齢かなー?」
「年下ならば従えない、と?」
軍人である朝比奈ならば体つきを見ただけで年齢を把握できる事に気付いたのだろう。
探るような声音に、朝比奈は少し戸惑った。
そこまで自分は信用ないのであろうか。
だとしたら、少し傷付くかもしれないと感じた自分に朝比奈は内心驚いた。
「そうじゃなくって、君若いのに無茶し過ぎって事。もうちょっと俺とか頼ってくれても良いんじゃないのって思ってさ」
「頼る…だと?」
更にどこか微かに戸惑うよう声音が返ってきて、朝比奈は今度こそその不器用さに苦笑した。
明らかに考えていなかった、といった反応であったから。
「今もさー、君疲れてるでしょう?ここ数日まともに寝てる?最後に食事したのいつ?」
「…健康管理はしているつもりだ、問題ない」
「いーや、絶対疲れてる。動きも鈍いし」
「…お前の心配する対象は私ではない筈だ。四聖剣は藤堂の為に在るんだろう?その書類だってさっさと藤堂の所に持って行ったらどうなんだ」
あまりに自分に無頓着な発言に、朝比奈はむっとするとゼロに近づいた。
傍で見ると、やはり疲れが伺えるのは間違いではない筈だ。
少なくとも、朝比奈には分かる。
「別に、この書類は急ぎじゃないよ」
「…だとしても、朝比奈」
「無駄だよ、そんな事言っても」
そう言うと朝比奈はゼロの腕を掴み、そのまま一息に担ぎあげた。
ほぇあ、上がった悲鳴の可愛らしさに思わず和むと、歩きだす。
黒尽くめや仮面には恐ろしく似合わないが、悪くない。
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