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あるひと時のデキゴト
♀×ルルと言いながら、C.C.と神楽耶と天子とゼロなルルーシュのお話です。
×より+かも。
どちらかといえば、管理人が天子好きなので、天ルル寄りです。
では、続きからどーぞ!
柔らかで真っ白な髪が汚れてしまっていた。
気になったそれに手を伸ばしたのは、ゼロことルルーシュにしてみれば至極当たり前の出来事で。
「天子様、怖がらなくてもゼロ様は優しい方ですのよ?ほら、もうお泣きにならないで」
ぽろぽろと零れる涙を必死に拭い、怯える瞳で見上げる少女をルルーシュは茫然と見下ろしていた。
普段年下に仮面が恐いなどという理由で泣かれる事などなかった為、歳下受けの良いルルーシュは途方に暮れてしまっていたのだ。
じぃーっと見下ろしてくる仮面に、少女の瞳に再び涙が込み上げる。
「ぅ…ふぇっ、」
「この馬鹿が、何を泣かせているんだ、お前は」
ガツンと仮面の後ろを殴ったC.C.に天子はビクッと肩を震わせた。
気付いたルルーシュが、振り向きざまにキッと相手を睨み付ける。
しかしその視線は勿論ながら、仮面に阻まれて効果は無かったが。
「っ…何をするっ、C.C.!余計に怖がらせてしまっただろう!!」
煩い、と怒鳴って再びC.C.は仮面を殴る。
既に後ろで天子の涙腺は崩壊寸前であったが、そちらを見ていない二人は全く気付いてなどいなかった。
「だいたいさっきから何を気にしているんだお前は、惚れたのか?」
「はぁ?何を馬鹿な事を言っているんだお前は。ただ私は天子様の髪が汚れていたから気になってだな!!」
「……私の、髪?」
ぼつり、と呟かれた疑問符を含んだその言葉に、漸くその存在を思い出したルルーシュは慌ててそちらを振り返る。
一瞬ビクッと肩を揺らした天子だったが、“髪が汚れていたから気になって見ていた”だけだという理由に先程よりも怯えはみられなくて。
「あら、本当に汚れていますわ。天子様は髪が白いから目立ちますわね」
「えっと…」
「……湯で濡らした布巾で拭くと良い。すぐに用意しよう」
そう告げて給湯室へと姿を消したルルーシュに、今度は天子が茫然とその後ろ姿を見送った。
次いではたと我に返ると、神楽耶の方へと振り返る。
「えっと、神楽耶。どうしてゼロ様は女官達を呼び付けて頼まないの?」
「此処には女官は居ないからですわ。他の団員ならいますけど」
「あいつは態々誰かにやらせたりしないだろう。何せあいつは家事全般が得意だからな。その腕前はプロ並みだ」
唐突に落とされたその爆弾に、初めて知った神楽耶はまぁと丸く目を見開いて驚いた。
天子も驚いてきょとんとしている。
「ゼロは、お掃除やお料理も得意なのですか?」
「あぁ、そうだ。裁縫や日曜大工も得意でな。あいつは旦那よりも嫁の方が向いていると思うぞ」
「まぁ、さすがゼロ様ですわっ!」
諸手を打って褒め称える神楽耶とは別に、夢はいつか星刻のお嫁さんな天子はキラキラと目を輝かせ始めた。
そこへ再び桶に半分ほど入れたお湯と布巾を持ったゼロが室内に戻ってくる。
「天子様、汚れを落としますので少し髪を触らせて頂いても宜しいですか?」
「あ、はい。どうぞ」
まだ少しぎこちないながらもキラキラと尊敬の眼差しを向ける天子に、ルルーシュは先程との違いに首を傾げた。
こてん、と傾げられた仮面は、けれど先程の話を聞いた後だと少し可愛らしいものに見えてくるから不思議である。
目線を合わせるように膝を着いてそっと顔を覗き込む仕草は、その黒仮面には似合わず立派な母性を感じさせて。
「どうかしましたか?」
「うぅんっ、何でもないの!気にしないで!!」
少し恥ずかしそうに笑う天子の様子を不思議に思いながらも、ルルーシュはまぁ良いかと髪を手にとって汚れを落とし始めた。
つくづく歳下に甘い男である。
優しく髪に触れて丁寧に汚れを落としていくその様子を、神楽耶と天子は興味津津で見つめていた。
その手付きは大衆のゼロへ対して抱かれているイメージに似つかわしくないほど優しく繊細な雰囲気を醸し出して、作業を終えたルルーシュは二人の笑顔と鉢合わせする。
予想外の反応を示す少女二人の視線を一身に受け、ルルーシュはどこか居心地悪そうに身じろいだ。
「ゼロは本当にお嫁さんみたいね」
「…は?私は男ですが??」
「あら、戸籍上は男でも、家事全般完璧な方は立派なお嫁さんになれますわ」
「いや、それはそもそも相手が居ないと始まらないのでは…、」
ルルーシュは明らかに突っ込む場所を間違えていたが、誰もその事に関して突っ込む者はいなかった。
逆に、無邪気な笑顔で天子がハイッ!と手を上げる。
「私、ゼロの旦那様になってみたい」
「あら、星刻様は宜しいんですの?」
「違うの。星刻はお婿さんで、ゼロはお嫁さんなの」
中華連邦は一夫多妻制なので、確かにそれならばゼロを一人抱えたところで問題はないが、ルルーシュはそもそも何故自分が嫁などという不名誉極まりない展開になっているのか分からなかった。
しかしC.C.は察したようで、むしろ納得気に笑って頷いてみせる。
「なるほど、ゼロは神楽耶の旦那で、天子の嫁という事か。ならば私はあの玉城とかいう男の言った愛人のポジションになるな」
「…はぁ?話がまったく読めないのだが」
「お前にとってはどうでも良い話だ。おい、それより私は今、酷くピザが食べたい。」
ドカッとソファに腰を下ろすと、C.C.は踏ん反り返って偉そうにそう命じた。
命じられたゼロは諦めたように深い溜息を吐く。
「少しは食生活を改めたらどうだ?」
「中華連邦ではピザハットを使うなと言ったのは貴様だろう?良いから作れ、私が作れと言っているんだぞ??」
再び深い溜息を吐くと、ルルーシュは神楽耶達の方を向き直った。
その仮面には、少し疲労の色すら見える。
「すみませんがC.C.もこう言っていますし、何か軽食を作ってきましょう。これといって食べたい物等はありますか?」
「ゼロ様が作って下さるものならば妻として何でも嬉しいですわ」
「私は…えっと、甘いもの、が良いな」
二人の慎ましやかな答えに、ルルーシュは少し感動した。
これが普通の反応なのだろうが、最近C.C.ばかり見ているせいで基準がおかしくなってきているらしい。
「分かりました、少し待っていて下さい」
いつもの癖でついポンッ、と天子の頭を撫でてから、ルルーシュは再びキッチンへと戻っていった。
残された女性三人は、それをぽかんとした様子で眺め。
暫しの静寂が部屋を支配する。
「…天子様だけ、ずるいですわ」
最初に羨ましそうに零したのは、神楽耶だった。
ぽん、と手を置かれた部分を少し嬉しそうに天子は触れ、はにかむように微笑んで。
「ゼロのおやつ、楽しみだね、神楽耶!」
「ふんっ、相変わらず歳下に甘いヤツだ」
ルルーシュの預かり知らぬところで、密かに「ゼロ」は株を上げていくのであった。
END
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